投稿:鍵山眞由美、写真:鍵山眞由美、HP編集:鍵山眞由美
ボロブドゥール遺跡(Borobudur)はジャワ島中部のジョグジャカルタ近郊にある世界最大級の仏教寺院の遺跡です。8世紀から9世紀にかけて建造され、「世界三大仏教遺跡」の一つに数えられています。1991年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。

現代の知恵を集めた古代遺跡、ボロブドゥール
アンコールワットと異なり、ボロブドゥール遺跡は政府によって厳しく管理されています。遺跡は塀に囲まれていて、勝手に出入りできません。遺跡本体に登るチケットは、事前にパスポート情報をしっかと入力して、ネットで購入しなければならず、入り口では本人確認が行われます。

こうして身元を確認することにより、心無い観光客によるいたずら書きや遺跡の持ち去りを防いでいるのです。また、入場も1日あたり約1,200人に制限されていて、何万人もの観光客による遺跡への踏み荒らしを防いでいます。

遺跡保護のため、遺跡に入るときは指定のサンダルに履き替えなければなりません。さらに、入場の際は10名ほどのグループに振り分けられ、それぞれのグループに指定のガイドさんがつきます。本格的な説明を受けられるのと同時に、観光客のルール違反が見張られるようなシステムです。


入り口から遺跡までの移動は、環境に優しい電気シャトルバスが用いられます。サンダル作りは地元の産業を支え、ガイドさんやドライバーさんは地元の雇用を支えています。賢くも素晴らしいシステムです!


ご覧ください!遺跡の底面は1辺が約123mの正方形、高さは約35m もあるピラミッド構造になっていて、参拝者は下から上へと登りながら、仏教の宇宙観である「欲界」「色界」「無色界」を瞑想し、悟りへの道を学ぶのです。今風に言うならば「体験式参詣」?!素晴らしい発想だと思いませんか?

壁面にはブッダの生涯を描いた膨大なレリーフ、内部には504体もの仏像が安置されています。このうち、最上部の円形テラスには釣り鐘型の「ストゥーパ(仏塔)」が並び、それぞれの中に仏像が安置されています。外部からはストゥーパの中を見ることはできません。

一体だけ、観光客のためにストゥーパが開けられています。ご覧ください!火山と向き合ったこの美しい仏様・・・何を思っていらっしゃるのでしょう。「みほとけなれど 釈迦牟尼は 美男におはす 」と言って弾劾された与謝野晶子に見せてあげたい!(画像をクリックすると拡大します。)
この遺跡は19世紀初頭にイギリスの総督らによって発見されるまで、1000年以上、火山灰と密林に埋もれていたとか。なんとロマンチック!発見したのはラッフルズ総督。シンガポールの、あの華麗なラッフルズホテルにゆかりのある総督です。


仏教とも仲良しのヒンドゥー寺院遺跡、プランバナン
さて、ボロブドゥールを後にして、車で1時間半。次はプランバナンを訪れました。ボロブドゥールが仏教遺跡であるのに対し、プランバナンはヒンドゥー教の寺院群で、教えを学ぶ学府でもありました。1991年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。

10世紀頃、近郊で大規模な噴火があり、さらに2006年にはジャワ島中部地震がおきました。プランバナン遺跡は大きな被害を受け、多くの塔が崩れ落ちました。 そして今も放置されたままのように見えます。なぜ、修復が遅れているのでしょう。

世界遺産として復元を行う際、「元々の部材が約75%以上残っていないと勝手に新しい石で組み立ててはいけない」という厳しい基準があるのだそうです。そのため、崩れ落ちた膨大な数の石は番号を振られて敷地内に分類・保管されており、今も地道な復元作業が続いているそうです。

巨大な仏教遺跡ボロブドゥールと、大規模なヒンドゥー教のプランバナン遺跡が、近郊に同時期に存在していた…その理由は何だったのでしょうか。
最初はそれぞれがいがみ合っていたそうですが、やがて、それぞれの王子と王女とが政略的に結婚し、両者は和睦へと導かれたのだそうです。このようにして、この地域では、仏教、ヒンドゥ教、そしてそこに地元の宗教が加わり、寛容な宗教的な雰囲気があるそうです。(クリックすると画像が大きくなります。)
プランバナンの敷地は大変広く、園内にはレンタサイクルが用意されていました。私もガイドのTomoさんと一緒に、夕暮れの遺跡群をめぐり、そこで流れる厳かで清らかな風を満喫しました。

日常生活に溶け込む祈祷師(シャーマン)
最後にシャーマンさんとの出会いについてお話します。シャーマンとは祈祷師のことで、地元の精霊信仰と関わっています。ガイドのTomoさんのお話ですと、旅行業界の人たちがあつまり、大切なお祭りの前にはシャーマンに「雨除け」の祈りをしてもらうとか・・・。

雨除けの儀式は、重要なイベントの際に普通に行われているようです。例えば2022年にインドネシアでモータースポーツの最高峰「MotoGP(インドネシアグランプリ)」が開催されました。しかし、途中で大雨に見舞われ、レースは中断。シャーマンのララさんが主催団体から呼ばれ、儀式を行います。すると、なんと雨は止み、この姿をMotoGP公式カメラが捉えて世界中に配信。爆発的な話題となりました。
このように、この地域では普段の生活にシャーマンが大きくかかわっているそうです。例えば、あなたが会社の経営者で、最近業績が落ちたとか、体調が悪いとか、そんなことが続いたら、それはあなたのライバル会社が、シャーマンに高額な謝礼を払って、あなたに「呪い」をかけているのかもしれません!


この呪いをブロックするためには、あなたは別のシャーマンを探し、やはり謝礼を払って呪いを解いてもらわなくてはなりません。この地域では、ごく普通に行われていて、いいビジネスになっている、というTomoさんのお話でした!もちろん看板を掲げているわけではなく、口コミで探します。(確定申告はないんでしょうね、きっと・・・)
それを聞いているうちに、シャーマンに会ってみたくなり、Tomoさんのご主人の友人のシャーマンさんに面談をお願いしました。それがこちらのマテオさん。もともとはキリスト教の信者だったそうですが、不思議なパワーを持つおじいさまからパワーを引き継ぎ、今はシャーマンとして活躍しています。

霊験あらたかな「未完成の仏陀」
せっかくの出会いなので、家族の健康を祈ってもらうことにしました。マテオさん曰く、そうするには日没後、「未完成の仏陀」にお祈りを捧げに行かなければなりません。この仏さまはボロブドゥール遺跡の敷地内にある小さな博物館の前に安置されています。霊験あらたかな仏さまとして地元の人たちの信心の対象になっているそうです。

早速その日の夕方に出発。もちろんゲートはしまっています。でも、マテオさんは顔パス!やがて「未完成の仏陀」のもとに、マテオさん、わたしとTomo さん、そしてTomoさんのご主人が集まり、裸足で周囲を三回回り、聖なるお水をかけます。


マテオさんによる祈りが始まりました。シャーマンさんの祈りってどんなだと思いますか? キェーとかエイ~ッとか、気合の入った奇声をあげるイメージではないでしょうか。ところがマテオさんの祈りはまったく違っていました。まるで父親が幼い子供をさとし、言い聞かせているような、そんな穏やかな口調が続きます。

仏陀がマテオさんに話しているのか、マテオさんが仏陀に話しているのか、わかりません。古代インドネシア語だそうです。夢うつつのうちに、いつの間にか祈りは終わっていました。
あとからTomoさんに聞いた話ですが、あの「未完成の仏陀」、実は505体目の仏陀、あのボロブドゥール遺跡のまさにてっぺんにあるストゥーパから19世紀に発見された仏像なのだそうです!調査のために博物館前に下され、そのままになっているということでした。

巨大遺跡の頂上にあるような重要な仏像が、なぜ未完成なのでしょう。「未完成の仏陀」はもともと重い石のストゥーパに収められていましたから、人間の目に触れることはありません。あとから破壊したとは考えにくい。それではなぜ・・・?
いろいろな説があるそうです。作っている最中に作者が亡くなった、注文した王が亡くなった、政治的騒乱があった、宗教戦争があった、でも、どの説も決め手に欠けているのだとか・・・。実は、今一番有力な説が…「わざと未完成のままにした」というものだそうです。「わざと」なんです!!

そこに秘められているメッセージとはなんでしょう。「しょせん人生は未完成。だから執着を捨てなさい」、という厳しい人生訓なのでしょうか。
それとも、「しょせん人生は未完成。だから未完成のままでもいいんだよ」という温かい許容のメッセージなのでしょうか。皆さんはどちらだと思いますか?わたしは後者が好きです。
帰国の日、空港にて

最後の朝… 私はコテージから空港行きのバス乗り場まで、バイクタクシーなるものを利用しました。5分くらいでしたが、なかなかスリリングでした。
村から空港までのバスは、路線バスも兼ねた寿司詰めのミニバスで、言葉を失いましたが…忽然と現れて見送ってくれたTomoさんの姿に、涙がこぼれそうになりました。


空港で、余った小銭でお菓子を買おうとしたところ、どうやらお金が足りない・・・もたもたしていたら、おじさんが真剣な面持ちで近づいてきて…「どうした?何を困ってる?なに?小銭が足りない?ならオレが買ってやるよ!」なななんですとぉ!インドネシアでは中年のおじさんが優しいです!
ロビーでフライトを待っているとき、突然、全員が起立。偉い人でも現れたのかと思いきや、テレビからインドネシア国歌が流れ、全員が唱和を始めたのです。大切な遺跡を国の財産として守り、地元の産業や雇用に役立てているインドネシアの姿勢と重なり、胸が熱くなりました。

思い出深いボロブドゥールの旅。いつかLSCの皆さんとご一緒に、再び訪れることができればいいな、と感じています。










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