鎌倉の古寺を往く 篠崎春彦

アジサイを求めて鎌倉の古寺を往く 
6月のある日、コロナ感染はやや下火になってきたので、アジサイ(紫陽花)観賞に鎌倉を訪れた。鎌倉のアジサイといえば明月院と言われるほど、境内に咲き乱れるアジサイは有名。鎌倉随一の「元祖アジサイ寺」である。明月院のアジサイはその青色が美しいことから「明月院ブルー」と呼ばれている。その明月院を主体に鎌倉の名刹を見て回った。

北鎌倉駅を降りたとたん、ぞろぞろと人の波が明月院を目指している。院内に入って行くと牛歩のように進むしかない大混雑の通路である。両脇のアジサイをチラチラ見ながら人に流されるように進行するしかなかった。平日でこの混雑では休日なら入場制限を余儀なくされるだろう。さらに、インバウンドで中国人が入って来たらどうなるか?ともかく人の波に閉口した。

私が驚いたの女性客が80~90%占めていた。美しい花を見て心が癒されるのはとりわけ女性が多いと言う。これは女性ホルモン「エストロゲン」が関係しているそうだ。

さらに方丈の丸窓の「悟りの窓」を一目見ようとする長蛇の列にも驚かされた。この混雑では2時間くらい待たされるであろう。それを苦痛と感じない。今や行列はなぜか若者たちのライフ・スタイルとなっている。

学者によるとこの流行現象は「バンドワゴン効果」と言って、友達と「お揃そろいにしたい」「みんなが選んでいる」との心理が安心感をもたらすようだ。思わぬところで昨今の若者の心理を垣間見たようで興味深かった。

明月院を離れて知恩院、東慶寺、円覚寺では緑深い景観が楽しめる静かなお寺であった。境内には、木立の中を散策できる小道が整備され、美しい竹林もあり、苔むした野趣あふれる庭が魅力的だった。ウグイスの声が響いて、深山幽谷の世界に飛び込んだような思いがした。

ところで古寺詣は妻に案内させた。妻は逗子出身で鎌倉の地形に詳しい。同伴したのは「ぼけ老人」を一人で行動させるのが心配になったのだろう。まったくトホホである・・・

過日、近くの幸手権現堂のアジサイを見にいった。今年は花付きが悪かった。

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