「痴人の愛」考 篠崎春彦

谷崎潤一郎 「痴人の愛」考

NHKラジオ第2放送で月曜日から金曜日の9:45〜10:00に放送されている朗読番組がある。これまで 夏目漱石「三四郎」、永井荷風「フランス物語」、森鴎外「雁」などの数々の名作の放送があった。僕は老化にともなって、文字を追うのが億劫になってきた。

そこで、朝の番組を録音して寝る前に睡眠導入剤のように聴講してきた。気に入った作品があれば単行本を購入して、活字で読み直すこともある。昨年暮れでは山田風太郎の「あと千回の晩飯」がある。自分の余命を計算する状況なった山田氏が、生きること、死ぬこと、老いることを独創的に、かつユーモラスにつづった「ヤマ風節」全開のエッセイ集である。

今年1月4日から「谷崎潤一郎「痴人の愛」の朗読が始まり3月11日で全49回が終了する。

耽美派の第一人者、谷崎潤一郎。耽美派というのは、道徳や常識を超越し、あくまでも美を追求した文学のこと。正直いって谷崎潤一郎と聞いて難しいかなぁと思った。とても睡眠導入剤として気楽に聞ける作品ではないと思った。

『痴人の愛』はエロ小説だと感じる人も多い。また変態小説だと感じる人もいる。ある一定の割合でこのような性的嗜好を持つ人はいるだろう。いや、意外と多いかもしれない。ふだんは眼をそむけ、意識の底に隠しているこの欲望を、谷崎潤一郎はものの見事に、文学的にも変態的にも表現してくれている。だからこそ、文学として高い評価をうけ愛され続けているのであろう。

僕も若い頃、エロ雑誌やポルノDVDなど嗜好したこともあった。しかし、高齢になって性欲や性的な気持ちがスッカリ薄らいできた。ところが、毎日にわたって「痴人の愛」を聴講しているうちに、谷崎潤一郎の世界に籠絡されたような気分になった。読み手の「女優・山像かおり」のリアルな表現力とともに、聴覚から入ってくる情報にゾクッと鳥肌が立った。

しかし、あくまでも小説の世界なので、「そんな人もいるのかなぁ・・・」程度にやり過ごしていた。感情を移入しては危険であるし、変態的な性的嗜好を共感するにはあまりに難解な課題だ。ではなぜ、これだけ多くの人に愛されているのだろうか。一言で言うと「美の極致であるから」という言葉につきるだろう。読めば読むほど、深い淵にはまってしまう耽美派。禁じられたものほど惹かれてしまうのは人間の性なのだろう・・・

爺さん婆さんは普通は呆けちゃうんだけど、LSCの会員は80歳を過ぎてもまだ「カクシャクとした老人」が多い。そんな元気な人たちは、一度はまったらなかなか抜け出せない、その甘美な世界を体感してはいかがであろう。

 『痴人の愛』あらすじ

質素で平凡で、時には「君子」とも呼ばれる生真面目な電気技師・河合譲治は、浅草のカフェーでナオミという美少女と運命的な出会いを果たす。ナオミの妖しげな美貌に魅せられた譲治は、彼女を自分好みの妻に育て上げようと共同生活を始めるが・・・悪魔的な愛欲の奴隷へと堕ちながらも、それを悦びと感じてしまう男の数年間を描いた谷崎文学の最高傑作。

ナオミの寝顔を見つめたり、足を舐めまわしたり、馬になったり・・・ここまでする男性はなかなかいない。

   ヌード作品(女はとても美しい)

 未知との遭遇  知り合い同士
 天空を翔ける  満ちた足りし時
 ショータイム  ギュー
風薫る  因われの身 


作品は僕の友人のもの。彼は銀座の画廊で個展を開くほどのプロ級である。僕の作品は品がなく、猥褻な感じがするので止めた。

  2021/03/10:独法師

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